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「奴はスバルの後輩なんだが、スバルが糸を引いてるんなら、奴も関わってる筈だ」
そうなんだろ?と睨む修也に、男はクククと笑う。
「・・・そんなことより、紹介してくれないのか?」
「そんなことじゃない。俺の身の潔白が掛かってるんだぞ。大事なことだ」
「興味がないね」
修也の訴えを一刀両断に切り捨てると、圭太に向かいニコリと笑みを浮かべた。途端に冷たい印象がガラリと変わる。妖艶さと可憐さを混ぜ合わせたような笑みに、まるで甘い匂いに誘われる昆虫のように惹き寄せられた。
ボッーと見惚れる圭太の目を、修也が慌てたように手で塞いだ。
「ちょっ・・・何すんだ」
「何が、何すんだだ。見惚れてんじゃねぇぞ。てか、見るな。魂抜かれるぞ」
「修也」
男が剣呑な雰囲気を纏う。
「うるせぇ、人の男を誑かすな」
「面倒な奴だな」
男が溜め息を吐き出した。圭太は鬱陶しそうに修也の腕を振り払った。が、心の中ではホッとしていた。魂抜かれるって揶揄は、あながち間違いではなかったから。
「圭太さん、初めまして。九条響です。お会いしたいと思っていたんですよ」
「・・・え、お、俺に?」
「はい。風太の父ちゃんに会ってみたかった」
「え?風太?」
なんで風太?圭太は目をパチパチと瞬かせた。
「この前、西園寺のところに息子達を連れて遊びに行った時、風太に会ったんですよ」
「・・・西園寺?」
誰だ?と眉根を顰める圭太に「奏だよ」と修也が苦笑混じりに応えた。
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