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「お前、俺に対する態度とエライ違いじゃねぇか」
「そりゃ、当然だろ。風太の父ちゃんに嫌われたくないからな」
「俺も将来的には風太の父ちゃんだぞ?」
「・・・だから、何だ?」
「だから何だって・・・そりゃ・・・もうちっと思いやれよ」
「思い遣れねぇ」
意味深に笑うと「遥」と九条が名を呼んだ。
「はい」
先程から後ろに控えていた男が頭を下げる。
「鍵」
遥によって手渡された一本の鍵を翳す。
「このマンションの空室の鍵だ。部屋にはベットしかないが充分だよな。・・・泊まって行くか?それとも帰るか?」
意味深な笑みを湛える九条に、修也がニヤリと笑った。
「決まってんだろ。泊まる」
差し出された鍵を受け取る。
「俺は帰る」
圭太の言葉は当然のように流された。
『3階の301。エレベーターを降りて左に曲がった突き当たりだ』
いまいち納得仕切れていない圭太を余所に、修也は強引に話を進めて行った。
「なぁ、修也。待ってくれ。訳が分からない」
戸惑いの声を上げる圭太を、ぐいぐいと引っ張って歩く。
「話は後だ」
エントランスを抜けて、エレベーターに乗った時は、軽く息切れがしていた。
何とか手を引き離そうとする度に、修也の握る手が強くなり、今は痛い程だった。
「痛いって、手、痛い」
「我慢しろ」
「無茶言うな」
圭太が憮然とした顔で睨み付けても修也は素知らぬ素振りでスルーした。
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