第5章

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頭の中で必死になって考えを纏めようとするが、それもままならない。 ただ一つだけ、分かっていることもあった。 修也達の話を信じるなら、昔惚れてた云々は全て嘘になる。つまり圭太は勘違いで修也を詰り、問い詰めたのだ。 もしそうなら・・・恥ずかしい。羞恥でどうにかなりそうだった。見知らぬ他人の前で、嫉妬して、目くじらを立てて修也を詰った。しかも泣き顔まで晒した。 穴があったら入りたい。いや、いっそ記憶喪失になりたい。圭太は頭を打ちつける物はないかと、辺りをキョロキョロと見渡す。思考が完全に現実から目を背けたがっていた。 また、修也に鍵を渡す際に言った九条の言葉も圭太の羞恥を煽っていた。 『組員が寝る為だけの部屋だから素っ気ないが、掃除だけは専用の業者が入るから清潔だ。潤滑剤なんて気の利いたものは用意してないが・・・なんとかするだろ?』 何とかって何だ。とは思ったが、訊ねる勇気は持てなかった。 『圭太さん、もし良ければ、今度は風太を連れて遊びに来て欲しい。大翔たちも喜ぶ』 別れ間際のその言葉には、笑みを浮かべて『是非』と返事を返した。
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