第5章

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◆ 爽やかな風が室内を吹き抜けていた。少しだけ肌寒く感じるのは何も身に纏っていないせいだろう。太陽の高さから、まだ午前中だと知れる。こんな時間に目覚めたのが不思議なくらい、圭太は疲れ切っていた。 気怠気な仕草で前髪をかき上げ、傍に正座させた男を睨み付ける。不機嫌を隠しもしない圭太を、修也はシュンとした顔で見ていた。 「俺が何言いたいか分かるよな?」 圭太は喘ぎ過ぎて掠れた声を上げ、忌々しそうに舌打ちする。 「腹が減ったんだろ?昨日の夜からなんも食ってないもんな」 だから不機嫌なんだよなと、言わんばかりの態度にイラついた。 怒鳴ってやろうかと口を開きかけた圭太は、しかし、修也が背後から取り出したビニールの袋によって気が逸らされた。 「・・・これ、どうしたんだよ。買いに行ったのか?」 パンツ一枚身に付けただけの男を胡乱気に見た。 「いや、違う。九条の使いってのが持って来てくれたんだ。飲み物とおにぎりが入ってんぞ。至れり尽くせりだよな」 お前、おかか好きだよなと、ニコニコ笑う修也を思いっきり睨み付けた。 九条に変に気を使われ、食事を用意されたことが恥ずかしい。身体中が怠くて、起き上がるのもやっとの自分が腹立たしい。 これも全て目の前にいる猿のせいだと、圭太は力の入らない脚で修也をゲシゲシと蹴りつけた。 「何が至れり尽くせりだ。ちったあ、羞恥を覚えろ。だいたい、テメェは盛りのついた猿かよ。何回やれば気がすむんだ」 もう無理だと何度も訴える圭太に、修也は根拠のない大丈夫だを繰り返し、最後は抱き潰したのだ。完全に落ちた圭太を、漸く離したのが明け方だった。 「だって」 「だって?」 言い訳をしようと口を開く修也に、先を促した。 「お前が煽るから」 「はあっ?・・・・・・うっ」 大きな声を上げ、起き上がろうとした圭太は腰に感じた鈍い痛みに悶えた。 「大丈夫か?」 諸悪の根源でもある男が心配そうに、圭太の腰を摩った。
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