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「大丈夫じゃねぇよ。今日1日動けないからな。風太も心配してるって言うのに、帰れないじゃねぇか」
「大丈夫だ。風太には俺から連絡しとく。芳樹んとこ居るんだろ?・・・だから、心配すんな」
「・・・・」
目を眇めてみせる圭太を、修也は安心させるように言葉を続けた。
「ちゃんと、父ちゃんは具合が悪くなったんだって言う。俺に抱き潰されて立てなくなったなんて言わないから」
「当たり前だ!」
圭太は眦を吊り上げて修也を遮った。
「んなこと言ってみろ?ただじゃ置かないからな」
「うんうん、任せろ」
修也は請け負ったと、胸を叩く。そんな修也に圭太は諦めたように溜め息を吐き出した。
「喉が乾いた」
「水でいいか?」
嬉しげにペットボトルを取り出した。枕を重ねると、圭太に腕を回し凭れさせる。甲斐甲斐しく世話をやく修也に「ありがとう」と礼を言い、圭太はペットボトルに口を付けた。
乾いた喉に冷たい水が染み渡る。ただの水が、これほど美味しいと感じたことは今まで一度もなかった。
「・・・・・・なぁ、修也」
圭太は神妙な顔をして傍に座る修也を見た。
「ん?」
どうした?と目を向ける修也に、圭太は暫く逡巡したあと「何で別れ話なんてしたんだ?」と訊ねた。
あの時、修也は沙織とのことを引き合いに出して別れ話をしていた。そこには、圭太の意思も修也の気持ちもなかったように思われた。
「本気で別れるつもりだったのか?」
修也は不安だったと言った。なら、圭太に直接問い質せば良かっただけの話だ。それなのに、自分の中だけで話を終わらせて、結果だけを伝えて来た。
どうしてそんな結論に至らなければならなかったのか、圭太は理由を知りたかった。
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