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「家帰って冷静になって考えたら不安になった。今は確かに圭太は好きだって言ってくれてるがな・・・それはもしかしたら俺の気持ちに引きずられただけなんじゃねぇかって思い始めた」
「引きずられたって・・・何だよそれ」
修也の言い草に圭太は腹が立った。修也に対する自分の気持ちを、否定されたように聞こえた。
「俺の気持ちを疑ったのかよ」
唸るような声で修也を問い質す。
「不安になったって言ったろ?・・・まぁ、ヘテロの男が男に抱かれるんだ。本気じゃなきゃ無理だろうし、心底お前の気持ちを疑った訳じゃない」
「・・・・・・ならいい」
胸の中にもやっとしたものが広がってはいたが、圭太は一応納得した。そんな圭太に、修也は真剣な面持ちで、でもなと続けた。
「お前の本気はいつまで続く?一人の相手に執着出来ない男の本気はどこで終わる?本気が浮気に変わる境界線はどこだ?・・・お前はいずれ目が覚めて、やっぱり女が好きだと言い出すんじゃないか?」
二股三股は当たり前で、気に入った女が居れば、直ぐさま口説いていた。花と花の間をひらひらと舞う蝶のように、圭太は浮気を繰り返して来た。
そんな過去を知る修也が、いつかは圭太の気持ちが離れて行くんじゃないかと、不安に思わないはずがない。
その事実を目の当たりにして、初めて己の過去の行いを悔やんだ。
「そうなった時、俺は俺の行動に自信が持てない。鎖に繋いで監禁するならまだいいが、下手したら俺はお前を・・・・・・殺しかねない」
昏い陰を孕んだ底冷えのする冷たい視線に、ゾワッと肌が粟立った。
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