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「だから・・・修也の好きにしたらいい。もし俺が、修也の言うように、やっぱり女がいいなんて言い出すような奴なら、その時は、煮るなり焼くなり好きにしろ」
こんなにも心を寄せてくれる相手を裏切るような真似をする男など、何されたって文句は言えないはずだ。
修也は驚愕に目を瞠り「お前・・・」と掠れた声で呟いた。
「でも、殺すのは止めておけよ?命が惜しい訳じゃないが、こんな奴の為に、お前が犯罪者になるのはイヤだからな」
自分をわざと貶める言葉を吐き、ニヤリと笑えば、修也は呆然とした顔で瞬いた。まいったと言うように溜め息を吐き出す。
「圭太には敵わねぇな」
「何がだよ」
ムッとして口を尖らせる圭太に「俺なんかより、よっぽどキモが座ってるよ」と肩を竦めてみせる。
「それは・・・褒めてんだよな?」
「もちろん」
疑わしそうな視線を修也に向けながら「・・・ならいい」と頷いた。
そんな圭太に向かい、修也が唇を寄せてくる。圭太はその口を手で塞いだ。
「・・・キス」
不満気な顔をする修也を押しやり、まだ話は終わってないだろと睨み付けた。
「蟠りはそれだけか?」
もうないのか?と訊ねる圭太に修也はシブシブ引き下がった。
「・・・あとは風太のことだ」
「・・・風太?」
なんでここで風太の話になるんだ?と首を傾げる圭太に「俺は風太も大事だからな」と目を細め笑う。
「何がそんなに気になるんだ?」
「・・・風太は、口では母ちゃんは要らないって言ってるが、時々母親と一緒に居る友達を目で追ってる時があるんだ。その姿を見る度に、ああ、やっぱり母ちゃんが居なくて寂しいんだなって思うんだよ」
初めて聞く話に圭太は目を丸くした。圭太は、そんな風太の姿を見たことがなかったのだ。
「・・・知らなかった」
「お前の前では意識してたのかもな。俺と一緒に居る時も、本当に時々なんだ。でも、だからこそあいつには母親が必要なんだと思った」
修也は寂しげな顔で遠くを見つめた。
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