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「・・・圭太の両親に挨拶に行かないとな」
「・・・挨拶?」
「ああ、圭太と風太を下さいってな」
クスリと笑う修也の吐息が擽ったい。
「反対されても、殴られても諦めるつもりはないからな」
「・・・そうだな。じゃあ、俺も一緒に殴られてやるよ」
道のりは長く険しいのかもしれない。困難ばかりが待ち受けているのかもしれない。
でも一人じゃない。二人なら大丈夫だと、根拠のない自信が沸き起こる。
安堵したからなのか、互いの腹の虫がグゥ~と盛大に鳴り響いた。思わず顔を見合わせて苦笑した。
「・・・腹減ったな」
「ああ」
ちゅっと触れ合うだけのキスを交わし合う。修也はビニール袋を引っ張り寄せると、圭太の手におかかのおにぎりを乗せた。
「沙織に感謝しないとな」
ボソリと呟く圭太に、修也が「そうだな」と複雑な顔をしながら同意した。
沙織には散々振り回されたような気がするが、修也と引き合わせてくれたのも沙織だから。
「お前に出会えて良かった」
素直な言葉が滑り落ちた。おにぎりの封を開ける手を止め、修也が瞬く。
マジマジと見つめられ、圭太は気恥ずかしくなってそっぽを向いた。
「俺もだ。圭太に出会えて良かった」
優しい声音が心を擽る。
「一生大切にする」
修也の思いが心に染み渡っていく。
手にはおかかのおにぎり。下半身はシーツに覆われてはいるが、何も身に纏ってない。
対する修也もおにぎりを手にし、下着だけを身に付けた状態だ。
お互いサマにならない格好で将来を誓い合う。進藤が見たら呆れるだろうかと考え、自然と口角が上がる。
「修也、結婚は出来ないが婚姻届は書かないか?」
「婚姻届?」
「ああ、で、証人の欄には進藤に名前を書かせるんだ」
最後まで引っ掻き回したのだから、最後まで責任を持って貰わなきゃ納得がいかない。
きっとあいつは、めんどくさいと散々文句を言いながらも、引き受けるだろう。
「・・・そうだな」
さっきよりも、更に複雑な顔をする修也が頷いた。
「メシ食って、もうちょっと落ち着いたら帰ろう。・・・てか、帰りたい」
風太の待つ我が家へ。
「大丈夫なのか?」
気遣う修也に頷く。支えて貰わなきゃ歩けないかもしれないが、修也なら嬉々としてやるはずだ。
「ああ、大丈夫だ。だから早く帰ろう」
「ああ、そうだな」
幸せな余韻に浸りつつ、圭太は手に持つおにぎりにかぶりついた。
完
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