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「やっぱりそれのせいか」
圭太には昴が何でそんなことをしたのか分からないと惚けたが、何となく予測はしていたのだ。
自分が言ったその言葉のせいじゃないかと。
『小原かなりキテたんじゃねぇか?・・・嬉しかっただろ?』
「・・・・・・まぁな」
目くじらを立てて怒る圭太を見て喜んだのは事実だ。
でもだ。それでも一言文句を言わなきゃ気がすまない。
「だとしても、遣り過ぎだ。あいつ、泣いたんだぞ?」
修也は唸るように昴を詰る。
『それは、俺のせいか?』
「決まってんだろ」
『違うだろ。どうせ、お前のことだ。小原の怒った姿が嬉しくて、暫く本当のことを言わなかったんじゃねぇの?あいつがお前に食って掛かる顔を堪能してたんだろ』
昴の核心をついた問いに、修也はうっと言葉を詰まらせた。
「・・・九条に聞いたのか?」
『何年付き合いがあると思ってんだ。お前の考えることなんかお見通しだ』
修也はバツが悪い顔をして押し黙った。
『人に罪をなすりつけるな。そんなことにまで責任は持てねぇよ』
「・・・可愛かったんだ」
修也は懺悔するように呟いた。
諦めた顔で『もういい』と呟いた圭太を見て、修也はやり過ぎたと気付き、慌てて圭太を呼び止めた。
あのまま行けば、永久に圭太を失うところだった。
修也は、ぶるりと身を震わせた。
『仲直りは出来たんだろ?』
苦笑を零す昴に頷く。
「まぁな」
『だったら結果オーライだ。俺の嘘は修也に比べたら可愛いもんだろ。そんなに殴りたいなら自分を殴っとけ』
そう言うと昴は、話は終わったとばかりに電話を切る。
修也はうぅーと一つ唸り声を上げた。自分の掌を見つめ、暫く逡巡したあと右頬を叩いた。
しんとした部屋の中に、パチンとこぎみいい音が響く。
「痛え」
トホホな気分で修也はスマホをソファへと投げ捨てた。
おまけ 終
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