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俺は負けたのか・・・。
ろくに口も動かせない状態のカイトは心の中で静かに呟く。
シエルにこの境界の中に落とされる最後の瞬間、ルナと目が合った気がした。
自分が負けたという事は、この後に何が起こるのか、ある程度は想像出来る。
まずシエルはその場にいたルナを惨殺し、その後自分に手を貸した者達の事も狙いに行く筈だ。
カイトと戦えた事でそれなりの満足感は得ている様子だったが、彼女の戦いに対する執着心は並みではない。
実際に戦ったカイトはそれを強く感じていた。
欲深い人間が一度その欲望に火が点くと、なかなかそれを抑え込む事が出来なくなってしまう場合がある。
シエルのようなタイプはまさにその典型だ。
強者の血を以てでしか潤う事の無い己の乾きを潤す為、彼女は行動を起こすだろう。
それはある意味、自分が彼女の欲望を刺激し、火に油を注いでしまったとも言える。
彼女の事は何としてもあの場で止めておくべきだった。
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