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ゆっくりと目を閉じたその時、カイトの中に声が聞こえてきた。
まだ捨てていなかったのか、その名前。
だからお前は弱いのさ。
本来の使命を忘れ、滅ぼすべき相手が誰なのかさえ忘れ、デコイ共と仲良しごっこをしているような今のお前ではな。
自分とそっくりなこの声を聞いた時、カイトは思い出した。
この感覚は以前にも何処かで感じた事がある。
そう、確かヤビコでアベルと戦った時のあの感覚に似ている。
自分の体に魔素が入り込んでくる感覚、そして己の中で膨れ上がっていく強大な何か。
どうやら今の自分は、この声の主に体を支配されてしまっている状態にあるらしい。
何かを言い返そうとしても全く言葉が出て来ない。
声の主が一方的に話を進めていくだけだ。
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