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「人間にとって欲は己を腐らせる悪いものだって言う人もいるけど、欲を満たす事を原動力に色々と頑張る事が出来るのもまた人間だけの特徴。それがどんな形であれ、それがどんな欲望であれ、欲が満たされた時に得られる快感を求めて人は行動を起こす。欲は更なる欲を生み続け、欲が完全に満たされる事は永遠に無い。それが欲望の生き物たる人間の宿命」
シエルは腰に手を当てながら更に続ける。
「まるで呪いだよね。でも見方を変えれば、己の中に湧き出し続ける様々な欲を満たし続ける事で人はその長い人生に意味を見出し、生きていく事が出来るとも言える。もしかすると、それこそが人生の正体なのかもね。だとしたら、欲が満たされない人生ほど退屈で無意味な事って無いと思わない？」
「な、何を・・・」
「今のあたしにとっての一番の欲望ってやつが戦いだって事だよ。戦いに身を投じている時だけあたしは全てを忘れ、この人生の中に自分の存在を実感していられた。でもさっきも言ったように、欲望ってやつは呪いと同じだ。あたしの欲は留まる事無く増長し続け、より強く、より剛なる者の血を以てでしか潤う事はなくなっていった」
シエルは自分の手に付着した血を見つめながら言う。
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