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少女は、肩を落として歩いていた。
いや、歩いていたという表現は正しくないかもしれない。
ここは、天も地もなく、闇が支配する世界。
歩く、というよりは、自らの意思で進める世界なのだから。
その少女の存在も薄く、恐らく生きてはいないだろう。
それでも、この闇の世界に滞在する理由は成仏できていないからだ。
「あらあら、浮かない顔して、どうしたのかしら?」
死んだ後、気づいた闇の世界で出会ったお姉さんは、優しい笑みを湛えたまま、一番最初と同じ場所で少女を待っていた。
「あの、5人も見つからなかったの」
そう言いながら、ランプのような入れ物を差し出す。
その中には、4つの光る珠のようなものが入っていて、それはまるで蛍のように、規則的に光ったり消えたりしていた。
「だって、私をいじめていたのは、4人だから」
その言葉と共に、うつむく姿は、自信のない少女にとってはいつものことではあるのだが。
目の前にいる「優しい笑みを浮かべたお姉さん」は、見られていないからか、その形相を歪んだものにしていた。
しかし、一瞬でその真実の表情を改め、優しい声で、少女を招いた。
「大丈夫よ。こちらにいらっしゃい」
そう言いながら、ランプを受け取ると、その美しさに目を細めた。
その中に入っている光の珠の眩さこそ、求めていたものだからだ。
「ふふふ、これだけのものが手に入ったのなら、別に5人でなくても構わないわ」
そう言って、少女を優しく撫でて、笑いかける。
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