1  すさんだ心

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「なにこれー。ゴミクズを作ったの?」  おそらくその言葉は一生忘れない。    それからの毎日は、まさにゴミクズだった。  先生にばれないように、しかししたたかに、1年生の頭でよく思いついたなと思うほどのことをされた。貸した鉛筆やら消しゴムを捨てられる、なくされる、そんなことは序の序の口で、ランドセルの中に紙くずを詰められたり、図工の作品を汚されたり。教科書が何ページか破られていて、先生に聞かれたことに答えられなかったこともあった。  それらは絶対に彩夏が表立ってやったことはなく、彼女の幼馴染の誰かを使っていた。  1番ひどかったのは3年の時で、担任の女先生と彩夏が仲が良かったらしく、席替えが美野里が休んだ日にされていて、席が先生の真ん前で、隣が彩夏たちから嫌われている障害持ちの男子にされているのがお決まりだった。  その年は両親が校長室に直談判に行ったことを覚えている。  それでもいじめが終わらなかったのは、彩夏の家が地元の大地主だからだと解釈せざるを得ない。  その年までいた校長は、父をこう言って追い返したそうだ。 「あの山宮さんのお嬢さんがそんなことをするわけないんですよ!あなたの娘さんが恨んでるだけでしょう?そちらさんの方をどうにかしてほしいものですな」  その言われようで父は美野里を転校させようと思ったらしいが、美野里の家はその小学校の裏手にあったために、隣の学区の小学校には遠すぎて通えないと断念したらしい。その小学校はひと山越えたところにあるので、片道50分ほどかかってしまうのだ。  だんだん登校する回数が減っていき、4年を迎えた。校長と担任が運よく異動になり、新しい担任は少しばかりマシにな人になった。  その担任は、半年ほど前に美人の同僚の先生と結婚した、公平な先生だった。  しかし、公平なのは学習面に関してだけで、3年の頃の担任とちっとも対応は変わらない――ということが分かってから、また元に戻りつつあった登校回数は減っていった。  5、6年で担任になった若い女の先生は、美野里の話をとても親身に聞いてくれる人だった。いろいろと努力はしてくれたが、すでに定着していた風潮を変えることも、いじめを止めることもできなかった。見つけてくれれば相手を叱ったりなんなりしてくれたのだが、相手は手口を巧妙に変えてやってくる、いたちごっこのようなことになり果てた。
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