第5話

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 祥子は毎朝、出勤する文男を送り出す。その後、自分が出勤するまでの30分間を『WINDOWS98』とのメールの時間に割り当てていた。  今日も文男が玄関の扉を閉めると、祥子は軽くハミングしながら自分の部屋に行き、パソコンのスイッチを入れた。この時間が今の祥子にとって一番の楽しみだった。早くメールを読みたいと思うと、パソコンの起動時間さえじれったく感じた。  やっと起動したパソコンでメール受信すると、途中で画面がチラつき始めた。少し待ってみるがそれはおさまらず、それどころかもっとひどくなり、まるで切れかけた蛍光灯のようにチカチカと瞬きはじめた。最近、調子がおかしく、こういうことがよくあるのだ。だが、放っておけばいつも自然とおさまる。おさまった時にはメールの読み込みが完了している。  1度はウイルスではないかと疑い、研究所で使っている最新の検出ソフトを走らせてみたが、ウイルスではなかった。  画面がチカチカするだけならまだいいが、フリーズしてしまうことや、とつぜん電源が切れてしまうことも2、3度あった。  ――もう古い型なので、買い替えどきだな  そう思いながらも、これまで研究に忙しく、先延ばしにしていた。  今、チラつく画面を見ながら、祥子は苛立ち、同時に不安になっていた。このパソコンが壊れたら、数日は彼のメールが読めなくなる。  ――よし、明日新しいのを買って来よう  祥子は決めていた。謎の男『WINDOWS98』は、祥子の生活の大事な部分になっていた。  画面のチラつきがおさまり、メールの文章が現れた。祥子はワクワクしながら読み始めた。
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