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第2話
現代科学の発達にはめざましいものがある。人間そっくりに動くロボットが開発されたり、吐く息からある種のガンの有無がわかるようになったり、化学物質を合成して年代物のワインのコピーを作ってしまえるようになっている。この世界の隅々まで、今や科学で説明のつかないことなどないように思える。
だが、本当にそうだろうか?
1990年に、アメリカのエネルギー省と厚生省が30億ドルを出し、人間のDNAの全配列を解析する『ヒトゲノム計画』を推進した。世界の研究機関がこれに協力し、2000年6月26日に解析が完了。その結果、人間の全遺伝子の99%の配列が、99.99%の正確さで分った。だが、これで遺伝子の謎が解けたわけではなかった。実際はまったく逆だった。
この計画に携わった科学者たちは、人間のDNAを調べていくうちに、どうにも説明のつかないことにぶつかったのだ。それは、全遺伝子の97%が何の役割も持っていないという事実。(科学者たちはこれを「ジャンクDNA」と呼んでいる)つまり、わずか3%の遺伝子だけが人間の中で機能している。生まれてから死ぬまで、その3%だけで十分なのだ。
ならばなぜ、そんな役立たずの遺伝子があるのか? 生命が誕生してから人間に進化するまでに、そんな必要のないものが自然にDNAに入り込むとは考えられない。ならば、誰がそれを入れたのか?
遺伝学者たちは今もこの問題に頭を悩ませている。科学が進歩すればするほど、未知の領域は増えていく。
***
中古車ディーラーの高橋文男がいつも通り夜10時過ぎに帰宅すると、ダイニングテーブルの上に、いつも通り、妻からのメモが置いてあった。
『実験で遅くなります。夕食はラザニヤを用意してあります』
「またかよ……」
小さく舌打ちした文男は、テーブルの上のラザニアの入っている容器を手に取り、しみじみと眺めた。
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