明くる日

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間もなく3人は来てくれ、ミナは(はばか)ることなく王城を出た。 そのままミナたちは港に出ると、港湾施設のなかの、展望用の露台に出て、レテ湖を眺め、しばらく過ごした。 ミナの慣れ親しんだ景色ではなかったけれど、アルシュファイド王国に帰ってきたのだと実感できた。 その後、大通りを少し歩いて、甘味亭で甘いものを食べ、葉茶を飲み、(くつろ)いでから、火の宮に赴いた。 ラフトフル・シア・スーンはミナを見ると真っ赤になり、頬を強張らせて、あのときは失礼しました、と頭を下げた。 「気にするようなことじゃないよ。それより、修練の様子を見せてくれる?」 ミナはそこで、カィンが持ち込んだという修練法を見せてもらい、1カロンの完全体の価値を知った。 その修練法とは、1カロンのサイジャクを用いて、放出する力を制御するというもの。 確かに、1カロンという最小単位でこれをするなら、不完全体よりも完全体の方がいいに決まっている。 不完全体の1カロンとは、1カロン以上、2カロン未満なので、下手をすると2カロン近い1カロンだって存在するのだ。 ミナはそれとなくラフトフル…ラフィの前に1カロンの完全体を並べ、様子を見てみた。 すると、どうやら不完全体との見極めが出来るようになり、修練の成果も、はっきり見えるようになった。 その仕業に気付いたファラが、困ったような顔をしたが、ミナは笑って言った。 「これで完全体と不完全体を見分ける新たな選別師の、最初の仕事が出来たね。ファラから進言しておいて」 それから、と付け加えた。 「黒檀塔の騎士たちも指導しなくちゃね」 そうしてミナは、火の宮を辞した。 ファラたちも大変な努力を重ねて国をより良く導こうとしている。 ミナはそんなことに関われるのが楽しくて、役に立っていることが嬉しくて、弾むような足取りで王城へ戻った。 ファロウル、ティル・グローナー、ジェン・ドナフィアに付き合ってくれた礼を言い、自室に戻って夕暮れの空、庭の向こうの街並みを見つめる。 自分に出来ることは小さい。 それは選別場で働いていた頃と変わらない。 でも今はそれが、たくさんの人の役に立っていると思える。 大きなことをやれば責任も大きい。 不安に押し潰されそうにもなるけれど。 ミナはここで踏ん張り、出来る限りを尽くそうと。 ようやく実感を持って思い定めた。
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