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諦めかけたところに、背後から鈍い音が響いてきた。
ドアが蹴られた音だった。それから人がもみあうような声。
「やめて壊さないでっ」
「ここにいるんだろうが」
再度、ドアが大きく蹴られる。
蝶番が外れて、木枠が弾けて飛んでいった。
「おいなにやってんだよおまえらっ」
聞いたことのある声が、頭上から降ってくる。
首をひねって無理な体勢から顔をあげれば、戸口に立つ影に、男たちも振り返った。
部屋の入り口には、バーテンダー姿の上城が立っていた。
「……か、上城、さ……」
押さえつけられ、服を脱がされている陽向を見て表情を凍らせる。
一歩踏みだし、拳を胸のあたりで作った。
「そいつを離せ」
ひとりずつ殴り倒しそうな勢いに、男のひとりが大ぶりのナイフを取りだし、陽向の顔にかざした。
「おおっと、手ぇだすなよ」
威嚇するように、陽向の頬に刃の先端を当てて見せる。鋼が鈍く光るのを見て、上城が怒りに顔を歪めた。
畠山が陽向から離れ、上城のまえに立ちふさがる。
「こいつの顔に傷つけられたくなかったら、大人しくしてろ」
薄ら笑いを浮かべ、顎を突きだし上城を見あげた。上城は男を睨みつけたが、押さえ込まれている陽向を確認すると、握りしめた拳を震わせながら脇にだらりと下ろした。
畠山が勝ち誇った顔つきになる。けれど、上城の反抗的な眼差しに、突然キレたように叫んだ。
「なんだよっ。てめえはいっつもいっつも、生意気なツラしやがって」
言うなり、上城の顔を拳骨で殴りつけた。
勢いあまって、上城は戸口まで飛ばされた。大きな音を立てて壁にぶつかり、そのまま頽れてしまう。
「か、上城さんっ」
陽向はナイフがあることも忘れて、肩を揺すって起きあがろうとした。三人がかりでねじ伏されていたので、びくともしなかったが、上城を助けたい一心で手足をバタつかせた。
「静かにしてろ」
髪を掴まれ、頬に張り手をされる。
「……いっ」
動きを封じられて、下着が引っ張られた。
「礎、おまえはそこで見物してな」
腰のあたりから素肌がさらされていくのがわかって怖気立つ。
陽向の足にひとりが馬のりになり、あとのふたりが自分のベルトに手をかけた。
――嫌だ。
上城のまえで、こんな奴らに犯されたくない。
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