3人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章
昼過ぎの授業というのはつらいものがある。
俺はどうしても睡魔に勝てないのだ。だがそれも仕方ないと言わざるを得ない。
昼食を食べ終えて、春の暖かい日差しに包まれながら眠る。こんな幸せなことはなかなかない。いったい誰にこの幸せの享受を邪魔する権利があるだろうか
いつもは教師に頭を叩かれて目が覚めるのだが、どうやら今日は様子が違っていた。
周囲のざわつく声で、俺はゆっくりと意識を取り戻す。
「なんなんだ……?」
せっかく気持ちよく昼寝をしていたのに。いったいなんなんだ。
「おい。起きろよ。やべえぞ樹」
後ろの席に座る男子生徒、田中に背中をたたかれる。俺は渋々体を起こし、周囲の様子を伺った。
「え……?」
俺はすぐに、クラスメイト達が大騒ぎしている理由に気づいた。
教室の窓、その向こうに、学校のグラウンドではなく漆黒の闇が広がっていた。
「なんなんだあれ……」
窓のほうを指さしながら、俺は田中に尋ねる。
「わかんねえ。いきなり窓の外が真っ暗になったんだ」
廊下側の扉はぴしゃりと閉じられており、何人かの生徒が必死で開こうとしているが、全く開く気配はない。
いったい何が起こっているんだ。
その時だった。
スピーカーから突然やかましいノイズが溢れ、「あーあー」と男とも女ともつかない子供のような声が聞こえる。
『あーあー。みなさんこんにちは。早速ですが、僕とのお遊戯会の会場に来てね』
その放送と共に、これまで何人もが必死になっても全く開く気配を見せなかった扉が、あっさりと開く。
最初のコメントを投稿しよう!