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『教室の前のほうの扉から外にでて、しばらく歩いたら、行き止まりでないほうに向かってあるいてね。そのさきにエントランスホールがあるから、そこで待っていてください。ちなみに、十五分以内にエントランスホールに来なかった生徒は、殺しますのでご注意ください』
えらく物騒な単語が聞こえた。
殺す、だって……?
しかし、目の前で起こっている超常現象を目の当たりにして、俺たちはその言葉を戯言として聞き流すことは、到底できなかった。
何人かの生徒が、びくびくしながらも教室の外へ出ていく。俺と田中も、おそるおそる教室の外を覗いた。
そこは学校の廊下ではなく、何やら大きな洋館の廊下のようになっており、柔らかそうな赤い絨毯が敷かれていた。
俺はおそるおそる教室の外に足を踏み出す。柔らかい絨毯が、俺の足を包み込んだ。
他の扉からも、俺たちと同じ制服を着た生徒たちが少しずつ出てきていた。おおむね見たことのある顔ばかりだ。どうやらここに来たのは、俺たちのクラスだけではないらしい。
左側は行き止まりなので、右側に向かって歩く。しばらくすると、大きなエントランスらしき場所に出る。
出口には大きな扉。奥には巨大な階段が二回に向かって伸びていて、天井には大きなシャンデリアがかかっていた。
まるで城の入り口のようだな、と俺は思う。
しばらくして、ぞろぞろと沢山の生徒が集まってきた。他のクラス、学年の生徒もいるらしく、
となると、あいつも……。
俺は生徒をかき分けて、その姿を探す。しばらくして俺はその姿を見つけることができた。
「加奈!」
俺は尾畑加奈おばたかなの肩を叩く。加奈はセミロングの肩を揺らし、ぱっちりとした目を見開きながら俺のほうを見た。
「樹くんも来てたんだ……。これ、なんなんだろう」
「さあ、俺にもわからん」
いったい何が起こっているのやら、皆目見当もつかない。
『えー。集合時間はまだだけど、もう全員集まったみたいなので、始めさせていただきたいと思います』
エントランスに響く先ほどと同じ声。階段の上に、なにやらデフォルメされた虎のような顔をした、二頭身のぬいぐるみのようなものが現れる。
『こんにちは! 僕は島三郎です! みんなよろしく!』
ぬいぐるみは何やら口を動かして、手を振りながらそんな言葉を発し始めた。
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