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「樹くん。どうしよう……」
開始直後、加奈が俺のところに来て不安そうに呟いた。
「大丈夫だ。これはただのジャンケン。しかもあいこでも勝ち上がれる緩いルールだ」
「え?」
加奈が不思議そうに首をかしげる。
「島三郎も言ってただろ。これはジャンケンだって。それぞれが持っている妖精は3種類。それぞれがグーチョキパーに該当するんだ。そして3時間以内に勝負をして、あいこか勝ちなら、生き残ることができる」
赤い妖精同士のときは生き残れると島三郎は言っていた。そして赤い妖精と青い妖精のときは、青い妖精だけが生き残った。つまりジャンケンをやって、あいこか勝ちなら生き残れるってことだ。
「け、けど青と赤の場合しか出てなかったよね。黄色はどうなるの?」
「それはとっくにわかってる。青に勝って赤に負けるんだ」
そうでないとジャンケンとして成立しない。
加奈は俺の耳に顔を寄せて、「私、青だったよ」と呟く。
俺は黄色。ここで加奈も黄色だったら、さっさとここで勝負して二人とも生き残れたんだが、残念だ。
「樹君は?」
「お前のやつに勝ってしまう色だ。ここで勝負はできない」
どこからか、青と黄を一人ずつ見つけなければならない。
制限時間は残り2時間55分42秒。赤青黄の数は10ずつ程度減っている。もう勝負を終えたやつがいるらしいが、多くがまだ尻込みをしているようだ。
「オレは黄色だ! 黄色の人は勝負してくれ」
一人の生徒が大声でそう叫びながら俺たちの横を通り抜ける。
何をやってるんだ。そんなこと言ってしまっていいのか……?
「樹くん。行って来たら?」
「いや……。なんか嫌な予感がするんだ」
こんな早々に自分の色を明かしてしまうことにメリットがあるとは思えない。
何か絶対裏がある。俺は直感的にそう確信していた。
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