ある冒険者の憂鬱

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「だれか……誰か、助けて!」 扉の向こうから聞こえた悲鳴に、俺は――正直げんなりした。 数日前、俺はとある貴族の依頼を受け、邪悪な魔女にさらわれた娘を救う為、この迷宮へやって来た。 本来なら、そのさらわれた娘かもしれないと、何をおいても救出に向かうべきだろう。 だが、今の俺にはそんな気などこれっぽっちも起きやしなかった。 俺だって、最初からこんな風じゃなかったさ。 そう、あれはこの迷宮に入って間もなくの事。 今思えば、あれがすべての始まりだった――
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