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――冗談じゃないっ!
俺は無我夢中でもがいた。
必死でバタつかせた足が、運よく魔物の腹にヒットする。
と、巻きつく触手の力がわずかに緩んだ。
すかさず懐の短剣を取り出し、ろくに狙いもつけずにとにかく振り回す。
これで倒せるとは思っていない。
それでも俺の反撃に、奴は明らかに怯んだ。
触手の力がさらに弱まる。
俺はもう一度、スキュラの腹に蹴りを入れた。
その勢いで緩んだ触手の拘束から逃れ、水面に上がって岸に手を伸ばす。
当然、スキュラも追ってくるが、俺は何とか床に這い上がった。
水中だから、不意打ちだからこその有利を悟っているのだろう、スキュラにこちらに上がってくる気配はなかった。
俺も無理に戦う気はなく、濡れて重い体を引きずり、その部屋を脱出した。
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