ある冒険者の憂鬱

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ところが、奴らはこっちの姿を見るや否や動きを止め、そのままくるりと向きを変え逃げるように去っていく。 なんだ?怖気づいたのか? 「やれやれ。もう大丈夫で……」 剣を収めながら振り向いた俺は、そこで絶句した。 さっきまで美少女だったはずのそれは、敵意剥き出しの鋭い爪と牙を備えた、灰色の、辛うじて人型を保つブヨブヨした『何か』に変貌していた。 「なっ……!」 とっさに身を投げ出し、振り下ろされた腕を避ける。 幸い、敵の動きは鈍い。 俺はすぐさま体勢を整えると再び剣を抜き、体ごと突進して敵を貫く。 「ぐげえええええっ!」 さっきの美しい悲鳴はどこへやら、下品な断末魔を残し、魔物は崩れ落ちた。 「……ふぅ。またニセモノかよ」 肉体的というよりは精神的な疲労に、俺はたまらず深いため息をついた。
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