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「たまにね、星に願いをかければ、叶ってしまうんじゃないかって。
ただ、本当に本当に、叶ってしまうんじゃないかって、思ってしまう時があるんだ」
君は悲しそうにそう言った。
「僕はいつの日か、星にお願いしたんだ。
ってね」
雪の鳴る夜にかき消されて、大事な君のお願いは聞き取ることができない。聞き返すと、君が居なくなってしまう気がした。
何故だか君は、まるでここに居ないみたいに透き通っていて。
夏の蒸し暑い部屋の中、柔らかい風が通ってふくらむカーテンのよう、ふわり、漂う。
「でも叶うことはなかった」
君の声はどこか不安定で。
落ちることなく僕の目の前に、ふわり、君の言の葉。
「星に願いをかけたって、叶うことはないんだ。
叶わないんだって、気づいたんだよ。
知らなかったんだ僕は」
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