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「……水早さん、運転ができたのですか」
「あれ、水早さんの車だからね」
しかも、丼池の車のどこに水早が乗っていたのだろうか。気配すらも分からなかった。
「さてと、まず、遊部さんを病院に連れてゆく」
タオルで抑えているが、頭が痛い。血で車を汚してはいけないので、レジ袋を被ってみると、昴がレジャーシートを出してきた。
「犬の散歩用のシートだよ。車を汚さないように敷く」
レジャーシートではなく、犬用のシートであったか。
「他に怪我はないの?何もされていない?」
頭が痛くて他は分からなかったが、服装が乱れていた。
「何かされたのかな?」
自分の服の下を見てみた。ベルトが外されているのが気になる。
じっと昴が俺を見ていた。車を止めると、丼池も俺を見つめる。
「……尻に違和感とかはありませんか?その、うまく締まっていないとか、挟まっているような感じとか」
「それはない。背中がヒリヒリする感じはある」
上着を脱いでみると、背を覗き込んでみた。
「あ、……」
昴が顔を背ける。
「あ……ああ……」
丼池がハンドルに顔を埋めた。
しょうがないので、自分で背の写真を撮ってみると、背中に文字が書かれていた。
熱湯で書かれたらしく、水膨れになって文字が浮かんでいた。
「ウソつき」
ウソつきと書かれている。尻のやや上まで文字が続いているので、それでベルトを外したのかもしれない。ズボンの感覚におかしい点はない。
「……遊部さん、病院で強姦されていないか検査をして貰ってください。この文字で警察が来るかもしれませんが、百舌鳥さんに言っておきます!」
病院でどう説明すればいいのだ。しかも、検査って何をされるのだ。
で、検査を省略すると、俺への疑いは晴れ、後ろは未使用、頭の怪我は避けたせいなのか、脳震盪のみで、あとは軽傷と診断された。一番ひどかったのは、背の火傷で、包帯だらけになってしまった。
検査のため、一晩入院して、丼池家に戻ってくると、丼池家の母親、美奈代が真っ青になって泣いていた。丼池はどんな説明をしたのであろう。
「遊部君。もう勝手に夜中に仕事になんて行かないで。お願い、心配したのよ。強姦されていなくて、本当に良かった」
俺は真っ赤になってしまった。丼池を見ると、真剣に美奈代の言葉に頷いていた。
検査のことは忘れたい。強姦でも、泣き寝入りしたいような検査をされた。そもそも、見られる。
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