第1章

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生葬屋 儀場 二 『僕らは上手に嘘をつく』 第一章 嘘吐きの原理  俺、遊部 弥吉(あそぶ やきち)が、生葬社に就職して一か月が経過した。分からない事はまだまだ多いが、どうにか一人で接客するまでにはなった。  今日の客は、大学生であった。俺も、最近までは大学生であったので、話し易いだろうと、店長、百舌鳥 人類(もず ひとる)が決めたのだ。  大学生ならば、現役大学生の、丼池 成己(どぶいけ なるみ)や、その同じ年の弟、丼池 昴(どぶいけ すばる)の方が適任ではないのか。  しかし、丼池は学校と工事現場への潜入捜査、昴はまだ車イスで戦力外であった。俺しかいないので、俺であるのかもしれない。 「大丈夫、平気、平気……」  言葉で自分を慰めてみるが、余計に緊張してしまった。そして、俺は、幾度も、接客スペースを掃除していた。  駅から左右に伸びる、一番商店街と二番商店街。二番商店街の先には、小中高と大学がある。二番商店街は、学生が賑わう通りであった、一番商店外の先には、有名な寺社があり、平日でも参拝客が多い。付近には、土産物屋も多く、観光バスの駐車場もあった。  ここ生葬社は、一番商店街の途中から国道へ出る道沿いにあり、通称三番商店街、周囲は葬儀場と葬儀社、駐車場ばかりの通りであった。 「あの、予約した安田です」  そっと生葬社に入ってきたのは、茶色い髪のまだ少年であった。きょろきょろと周囲を見ながら、人を探していた。 「どうぞ、こちらへ」  接客スペースに安田を通すと、椅子を勧める。 「あの、貴方が生葬社の方ですか?」  安田が、疑うように俺を見つめる。俺には、貫禄がない。社会人であるのかさえも、疑いたくなるのだろう。 「はい。資料には目を通しましたが、実際にお話しを伺わせて貰えますか?」  安田は、困ったように周囲を見回していた。俺ではダメだということなのであろうか。 「……分かりました」  安田が、俺しかいない事を確認すると、観念したようにポツリポツリと説明を始めた。  安田の依頼は人探しであった。それならば、探偵の仕事であるのだが、探して欲しいのは、むしろ事実で、多分、死んでいる人のことだという。  安田の親友に、織田という人がいて、彼は病気で長くは生きられない。そこで、織田が生きているうちに、隠していた過去に決着をつけたいらしい。
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