第1章

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 回収屋の影響だと、儀場がマークしていたところに、自分が誰なのか分からないと言いながら、両親と無理心中した青年が出た。  そこで、このアパートの住人は、次々、引っ越ししていった。  両親と無理心中した青年は、このアパートに半年ほど住んで、実家に戻っていた。でも、住民は、自分の脳の怖さを知っていたので、皆逃げたかったのだろうという。 「脳の怖さ?」 「住民を聞き込みいたとき、幽霊を見ると言っていました。回収屋の影響でしょう」  宇宙人が来ると言った者もいたという。  でも今は、回収屋は住んでいないのだろう。ならば、ここは、特に問題がないのではないのか。 「このアパートに回収屋が住まないように、俺が管理人なのかな?」 「そこに住んでいた回収屋は、儀場さんが怒って再起不能にしたといいます」   儀場は、怖い人なのだろうか。では、何が問題なのであろう。 「詳しくは、明日、会って説明します。すぐに、どうこうという問題ではないですから」  丼池はダメだと言うが、百舌鳥はここの管理人を仕事で依頼してきたのだ。  俺は、やっと風呂に入ると、やはり、どこかおかしいアパートを考えてしまっていた。  このアパートは、どこか怖い。何が怖いのかと考えてみると、少しずつ、何かおかしいのだ。それが、次にやってくる変に対して、倍の怖さになってやってくる。  アパートの横で飼われている、犬。犬の家賃を払っているのは、誰なのか。この管理人室、普通のアパートに管理人はいないだろう。ここは、何かの寮であったのかもしれない。  歪んだ廊下、設計ミスなのかもしれないが、よくある引っ越し前のビー玉での歪みチェックでは、廊下はしないだろう。  決定打に怖いのではなく、僅かに積もってゆくので、とても怖くなるのだ。  そして、死にたくなる。 「そうか、このアパートは死にたくなる」  結果は分かったが、それでは、船生も危ないのだろうか。  次の日、丼池家に昴を迎えに行くと、昴は中々出て来ない。勝手に引っ越しをしてしまったので、怒ってしまったであろうか。 「丼池君、昴君は、今日は休みかな」  やっと玄関に来た丼池は、黙って首を振っていた。  どことなく家の中も静かであった。  丼池に腕を掴まれて昴の部屋に行くと、母親が横で眠っていた。母親の美奈代は、かなり疲れているようで、目が落ち窪んでいた。
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