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変な声に、昴が飛びのいていた。周囲を見回し、昴が確認するように俺を見る。
「それ、犬」
窓を開けて昴に犬を見せようとすると、犬が窓から飛びこんできた。
「うわああ」
首輪は付いているので、繋いでいるリールがないのだ。
「ワンワンワン」
この犬、喋っていた。訳すとこうなる。
『回収屋のやつは、また、さぼっているのか?今日もあるぞ』
何があるのだ。犬は走って行って、階段の下で又吠えた。
「わうんん」
『ほら、ここに落として行った』
犬の吠える先には、異物(インプラント)が落ちていた。
「わんわんわん、わん」
『ここに自殺に来て、死の恐怖に落としてゆくのだよね。異物は一個で限界なのだよ、人間は弱い』
昴が異物(インプラント)を拾おうとしたので、俺は、ハンカチで急いで包んでポケットに入れた。
「わん、わん、わんわん」
俺が吠えても通じるのだろうか。何故、異物(インプラント)を複数個も持っている人間がいるのだ。
「わんわんわ、ん」
通じたようで、返事がきた。
『お前何だ?異物(インプラント)は回収屋が与えたものだよ、元々が通過者だと、自殺で、自分で異物(インプラント)を落とそうとしたよ』
それから、異様な光景であるが、犬と世間話をしてしまった。犬は、オウムの異物(インプラント)を回収屋に与えられてしまったのだそうだ。それから、人の言葉も分かるし、記憶も持っていた。
元々が通過者であるのに、更に異物(インプラント)を与えると、記憶が重複され、狂ってゆくらしい。ただ記憶が再生され消えた状態よりも、症状は重い。
ただ異物(インプラント)を与えられただけならば、自殺しようとした瞬間に、異物(インプラント)が抜ける場合が多い。死に直面して、人生観が変わったと、当人は思うのだそうだ。
「回収屋って、嫌な奴だな」
「ワンワン」
そうか、言葉が通じるのだから、俺が犬のように吠えなくてもいいのだ。
『俺様の飼い主は……』
頭が良くても、やはり、犬なので、飼い主がいるのか。
飼い主?この犬の飼い主は、異物(インプラント)を知っているのではないのか。もしかして、回収屋なのか。
そう思った瞬間、部屋から飛びだしてきた男に、昴が殴り飛ばされていた。
「昂!」
咄嗟に立ち上がったが、犬に足元を走られてしまい、バランスを崩した。
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