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病院でも緑があるというのは、どこか落ち着く。緑を見ていると、俺も、落ち着いてきた。
「おまたせ」
織田が、コーヒーを買ってくれた。
「熱いですから、気をつけてね」
渡されたコーヒーを飲むと、確かに美味しい。
「美味しい」
「良かった」
織田が、俺が飲むのを確認してから、ゆっくりとコーヒーを飲み始めた。
「安田から聞いています。弟の勇弥の件ですよね。安田の話は、誰も信じなかった。俺も、誰にも言っていませんが、俺の言い分があります」
弟、勇弥に出かける時は、嘘をついていたというのは同じであった。しかし、勇弥が行方不明になった日は、公園で遊んでいたという。
「凄い風が吹いていまして、海にも山にも、川にも行くなと親からきつく言われていました。そこで、近くの公園に行くと、付近の子供が皆揃っていました。風で飛ばされるボールが面白くて、それで、ドッジボールをしていました」
気が付くと、勇弥がいなかったが、家に帰ったのだと思っていたらしい。
しかし、それから夜になっても勇弥は見つからず、大騒ぎになった。
「秘密基地というのは、本当にあったの?」
「ありました……」
勇弥が行方不明になった次の日、織田と安田は、もしかして秘密基地に勇弥がいるのではないかと、親の目を盗んで出かけた。
誰もいない事を確認して、秘密基地の隠していた出入り口の板を外すと、勇弥が血まみれで倒れていた。
そこで、物音がしたので、織田が隠れたが、安田は勇弥に駆け寄ってしまった。
秘密基地に入ってきた、大柄で優しそうな男は、無言で安田を殴り飛ばすと、次は蹴り飛ばした。安田が泣いて叫んでいたが、直ぐに意識がなくなっていた。意識の亡くなった安田を男は担ぐと、外に止めてあった軽のトラックの、荷台に置いてあった米袋のような袋の下に、安田を乗せた。袋は幾枚も束になっていて、安田の上に積み上げられた。
走り去る軽トラックを、織田は秘密基地のある二階から見ていた。
「安田君も行方不明になっていたの?」
「いいえ」
織田は、コーヒーを両手で握り潰しそうになっていた。
「安田の居なくなった場所に、小さな鉄の棒のようなものがあって、つい、拾ってから勇弥に駆け寄りました。すると、勇弥の手に金属が消えて、勇弥が安田になりました」
織田が俯いていた。手も震えていた。こんなことを誰に言っても信じて貰いえないだろう。けれど、俺には分かる。
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