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ーーーあれから数年後の話。
私はあの日、鬼仙と共に、「こちら側」の世界へ足を踏み入れた。
気を失ってから、目が覚めて初めて目に入ったのは珍しそうにこちらをのぞき込む、この世界の住人達だった。
「あっ、仙じーちゃん、目が覚めたみたいだよ!!」
私より年下であろう風貌の子供たちが3人私の周りを囲んでいた。
「おねーちゃん、人間界から来たって本当?」
「肌真っ白だねぇ、髪、真っ黒だねぇ」
「でも、瞳は紫だよ!!初めて見るよ!!」
3人が一斉に話はじめ、返答するタイミングを失い、戸惑っているところに顔を出した鬼仙が私のもとへ歩み寄ってきた。
「どうじゃ、気分は」
「大丈夫です」
立ち上がった私は、自分の体を見まわした。
「…変わったところはないんですね」
「そりゃあそうだ。見た目などこれからじゃ」
鬼仙は3人の子供たちを引き寄せながら優しく微笑んだ。
「改めて紹介させてもらう。この地域の長をしている、鬼仙だ。そしてこの子たちは、左から、スズ、ログ、チコという」
子供たちとの出会いはそこから始まった。
…私はこの世界の住民になるために、生活の仕方などを3人に事細かく教わった。
彼らは、見た目こそは私より年下だが、年齢は倍近くあった。見た目が変わらないタイプの鬼だと聞いた。
スズからは生活の仕方をおしえてもらい、ログからは戦い方、そしてチコからはこの世界のことをたくさんおしえてもらった。
どうやらこの世界では、人間界より時が進むのが早いようで、一気に年を取っていくらしい。1年で1歳年を取るのではなく、1年で10歳以上年を取ることもあるそうだ。
年の取り方は人それぞれで、能力によって差があるらしい。
能力とは、ここでいう「鬼」としての能力だ。力のあるものは早く年を取るし、能力のないものは遅く年を取る。能力が高い分、削られるものの大きいということだ。
しかし、100歳を超えても、見た目は20歳代なのだから、年はあまり関係ないのかもしれない。
…私は一人前に丸まで、鬼仙と3人の子供たちに様々なことを教わった。
やっと私が一人でこの世界でやっていけるようになったのは、あれから4年が経った後だった。
そんなにかかったのには大きな理由があった。
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