王都の日常

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そんなノーティング城には… 普段は賑やかな筈の王子や姫、親衛隊やナイト、ガーディアン達の姿が見えない。 それもその筈。 今日から一週間、王子達一行は夏休みを取り、水の国のリゾートに遊びに行ってるのだ。 城は五十階建てで、部屋数は玉座の間や、寝室等も含め軽く百は越えるほどある。 長い廊下を真っ直ぐ進み、突き当たりには会議室がある。 会議室の扉には結界が張られており、会議が終わるまで誰も出ることは出来ない。 しかし…ある者を除いては……。 会議室の中は…円を描くように長椅子と机が並べられており、その円の中心に国王が座っていた。 「つまらない…つまらないつまらないつまらないっ!!」 バンッと机を叩き、一人の青年が文句を言いながら立ち上がる。 腰まである長い灰色の髪を靡かせ、灰色の軍服を着て、帽子を被った中世的な顔立ちの青年が周囲をぐるっと見回す。 アカネ・ルヴェオルフ・ノーティング。 ノーティング王国の国王であり、王子や姫達の父親だ。 「馬鹿兄貴、とっとと座れ」 「今は大事な会議中ですよ」 「あんたの我が儘を聞いてる暇なんてない」 「つまらないのは誰も同じだよ?」 「アカネ兄さん、取り合えず落ち着いてくださいね?ね?」 アカネの隣の席に座る弟達が次々に文句を言ったり、落ち着かせようと声を掛けた。 「だって不公平じゃん!!子供達はバカンスを楽しんでるのに…何で僕達は城で缶詰会議しなきゃならないのさ!!」 不満たらたらにアカネは文句を言い切る。 「あーもう…めんどくせぇな!!ガキ共はガキ共で別だろうが!!あんたは王だろ!!国の大事な会議に文句を言う奴が何処に居る!?」 ガタンッと青年が立ち上がって叫ぶ。 灰色の肩くらいまでの長さの髪、黄色の軍服を着ており、中世的な顔立ちは眼光鋭くアカネを睨み付けている。 ルーカス・ノル・ノーティング。 西方領土領主であり、アカネの弟。 親衛隊のルーフェの父親であり将軍、六人兄弟の三男。 「何処に居るって…此処に文句を言う僕がいるじゃん?」 アカネは自分を指差して、ルーカスに視線を向けながら目を細めて言う。
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