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「どうした律。なにかいるのか?」
「ううん。あのさ、ボクって霊感とかあったっけ?」
振り向きざまに尋ねると、誉は顎に手をあてて考え込んだ。
年齢よりもジジくさい父の所作をじいっと見守る。
「……そういえば昔――」
「昔? 子どもの時?」
「……あ、ああ、いや、なんでもない」
「ええ~!?」
父はようやく口を開いたかと思うと途中で言葉を引っ込めた。歯切れの悪さに唇が尖る。
期待した答えが得られないことを悟り、仕方なく縁側の外へ飛び出した。
置きっぱなしだった大きなつっかけを不格好に引きずりながら、『声』の主を探し始める。
断続的に聴こえるSOSを辿って庭の柵を越えた時、一際大きく『声』が轟いたかと思うと、花を落としたツツジの枝にぶら下がっているカエルが目に入った。
「わあ! こんなところにカエルが引っかかってる!」
バタバタ手足を揺らすも、相変わらずツツジに捕らわれたままのカエルは、なんだか妙な格好をしている。
マントのような黒布を羽織っているせいで、蝶々結びにした合わせ目の紐が枝に引っかかっているのだ。
「なにこれ。ヘンなカエルー」
しゃがみこんでしげしげ観察していると、カエルはそんな律をギョロリと睨めつけ、大声で叫んだ。
「ヘンなカエルとは失敬な! 某はこのお山を守る主様の立派な眷属ケロ~!!」
「……はっ!? カエルが喋った!?」
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