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◇ ◇ ◇
そんな気持ちを抱えたまま、月日は過ぎる――
「この度、ザカート様が妃を迎えられることとなった」
ガルデニア城の片隅にある蒼竜魔導団の魔導研究所から歓声があがる。
研究所に集まった数十人の団員たち。彼らは皆、魔族だ。
魔族である彼らは、本来の主であるザカートの祝い事に、一様に喜びを感じ、その喜びを分かち合っていた。
「たしか、妃になられるのは、この国の姫のリコリス様ですよね」
魔導団の一員の一人が尋ねる。しかし、魔導団の将であるエラルノは首を横に振る。
「リコリス様ではない。白狼騎士団に属するキルシェ様とおっしゃる方だ」
「……騎士……ですか?」
場がざわつく。
ザカートは魔族の王。
魔族たちは自分たちの王の妃になるの人間は、それ相応の身分があって然るべきだと考えている。
しかし、名が上がったのはガルデニアの姫ではなく、一介の騎士の名。本来の契約とは異なった人物に、ガルデニア国の王であるアルベロに対する不満が噴出する。
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