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「――静まれっ!」
エラルノの低音の声が響く。
「これは、ザカート様の御意志だ」
一喝により、一度は静まった空間が再度ざわつく。
「今回、契約の変更はアルベロ王の意志だが、こちらにはそれを拒否する権利もある。しかし、ザカート様はそれを了承され、キルシェ様を迎えられることにされた」
王であるザカートの意志ならばと、一同は取り敢えず納得の姿勢をみせる。
「――で、ここからが本題だ。今回、キルシェ様を迎えるにあたり、アルベロ王は再度、契約を申し立ててきた」
「……新たな契約ですか」
「ああ、アルベロ王はリコリス様の代わりに、ザカート様の望まれる女性を差し出す。その契約の対価として、ある男の始末を望んできた」
「始末って……殺すことですか?」
「そうだ。アルベロ王は自分の手を汚さない形で、その人間を自分の前から消したいようだな。何かと理由を言っていたようだが、おそらく単純な理由なのだろうな」
エラルノは呆れたように鼻で笑う。
蒼竜の団員たちからは、厚かましいアルベロ王に対し、不平不満が湧き上がる。
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