魔族

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「……そうなのかも、しれません」 彼が言うのなら、自分では分からなくとも、そうなのだろうとフィーネは考えていた。 ミディは精霊種だ。だが、厳密に言えば純粋な精霊種ではない。 彼の家系は長い歴史の間に様々な種が混じり合い、特定の『種族』という概念が無くなっていた。混血の過程で多様な力も混じり合い、ミディの一族は親兄弟であっても姿形や持つ力もバラバラだ。 今、フィーネの心を読んだように見えたのも、種としての能力ではなく、ミディ個人の能力だ。といっても、特殊な能力という訳ではなく、魔力や気の流れや雰囲気を敏感に感じとり読み取っただけだ。 フィーネは再び押し黙った。 ミディに言われ気付かされた故郷に対する里心。その根底には周囲が次々と伴侶となる相手を見つけるなか、自分が未だに見つけることができずにいる焦りと負い目があるせいだと思えた。 「フィーネ。お前は心優しい娘だ。血なまぐさい戦場に赴いて、人間に不信感を抱いてしまったことも知っている。だからこそ気分転換にでもと思い、今回の任に選んだのだ。それで、あちらに戻りたいと思うなら、そのまま帰っても構わない」 椅子に座りキセルを咥えたエラルノは、フィーネの心情を咎めるようなことはせず、淡々とだが労るように語りかけた。 「でも、それは……」 「問題はない。ザカート様も了承されている。それに、人間に失望した状態で、こちらの世界に居るのは辛いだろう。今回を逃せば、次は百年後だからな」 「お気遣い、ありがとうございます。私、この任務を受けさせていただきます」 「そうか。面倒な任を任せてしまい、すまないな。後日、正式にアルベロ王から命が下りると思うが、それまでは他言無用で頼むぞ。……それと、帰郷するかしないかは、出発までによく考えておきなさい」 「はい。分かりました」
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