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部屋を出たフィーネは城の中庭を、一人歩く。
昼間なら何かと人の行き交う中庭も、夜遅いこの時間帯では人の影もない。
さほど広くない中庭は、城の窓から漏れる明かりでボンヤリと照らされている。フィーネは小さくため息をつき、そこにある長椅子に腰を下ろした。
「このまま帰っても良いのかな……」
フィーネは空を見上げる。
月の出ていない静かな夜空は、一面に星を瞬かせている。飲み込まれてしまいそうな夜空を眺め、思い浮かべてしまう。共に此方に来た仲間たちが伴侶を見つけ、子どもを育てる姿を――
この地に来て二十年。
人と年の取り方の違う彼女は、あの頃と変わらぬ外見をしている。しかし、時は確実に流れている。
仲間のなかには、フィーネと同じように人間に対する心象を悪くした者もいた。だが、時が流れていくと、そんな彼らも心を緩和させ伴侶を得て家族を作っていた。
フィーネは自分一人だけが、過去に取り残され止まってしまっているように感じていた。
しかし、そんなフィーネにも最近になり、気になる人間が現れていた。といっても、そこに深い意味はなく、ただ時おり、遠くから眺めているだけの存在だった。
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