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フィーネは初めて見る人間の世界に、胸を高鳴らせていた。
自分の住む世界と景色はさほど変わらないが、それでも全く違う匂いの空気を感じる。
大人と子供の中間の姿をした彼女は、長い髪を風に靡かせ、全身に人間の世界を感じていた。
彼女は人間と同じ外見をしているが、人間ではない。
人間は彼女たちのことを『魔族』と呼ぶ。
だが、彼女たち魔族は正確には魔族という種族ではない。はるか遠い昔、人間と同じ世界に生きていた人ではない存在――亜人種だ。
現在、魔族と呼ばれるようになった亜人種は、種族間の争いに敗れ異空間に隔離されてしまった者たちの末裔だ。
亜人種たちは、その隔離された世界で暮らしていたが、長い年月が過ぎ閉ざされた小さな世界のみでの種の存続が難しくなった。
近親交配が進み、奇形や退化する種が現れ始めたのだ。
危機感を覚えた亜人種たちの長は、強い力を持つ者を招集し、世界を隔てるために張られた境界を破壊し、元いた世界へと戻ることにした。
しかし、その世界に自分たちと同じ亜人種の姿はなかった。
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