魔族

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人間だけの世界になっていたその地に、彼らのような亜人種の存在は異形で異質だった。 何をするわけでなくとも、存在だけで人間には恐怖だった。 図らずも人間に与えてしまった恐怖が、彼らを『魔族』と呼ばせ、忌み嫌う存在とさせてしまった。 魔族と呼ばれる亜人種にとって、自分たちが世界には異質な存在だと知らされる衝撃は大きかった。その衝撃から、一度は種の存続という大義を諦めようともしていた。 それでも、やはり自分たちの血を残したいという願望は消えることはなかった。 彼らは強制的に人と交わり、血を残すことを選んだ―― 多種族の亜人種同士が交わると、高い確率で異形の子が産まれることがあった。しかし、相手が人間だとその確率はぐんと下がる。 それらを考慮し魔族は、人間を攫ったり、人間の世界に溶け込み暮らしたりを、百年周期で行うことにした。 そうやって、定期的に人間の血を入れることで、濃くなっていった血を薄めて次世代に繋いでいくことにしたのだ。
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