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赴いた戦争の地で、フィーネは愕然と目に映る光景を眺めていた。
立ち込める土煙と血の臭い。狂気に近い叫び声。
剣を掲げ、傷付けあう人間たち。
そして、苦しみ、血と涙を流しながら目の前で死んでいく人間の姿。
人間が人間を殺す。同種同士で殺しあう。
それがフィーネには酷く醜い姿に映り、人間の世界におぞましさを感じさせた。
魔族が戦争に加入し程なくして、戦争はガルデニアの勝利という形で終了した。
フィーネの心に、人間の醜い姿を植え付けて……。
◇ ◇ ◇
「フィーネ。最近どう? めぼしい男でも、見つかった?」
戦争の傷跡が残るガルデニアの街を歩いていたフィーネに声をかけてきたのは、共にこの地に来ていた別種の女性だった。
「……いいえ」
申し訳なさそうに、フィーネは首を横に振る。
戦争を終わらせた魔族たちは、この地に留まり本来の目的を遂行するために動き出していた。
もちろん、フィーネもその一人だ。しかし、彼女の表情は俯きぎみで明るさがみられない。
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