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「フィーネなら、すぐにでも見つけると思ってたのに。意外ね。こんなに可愛い顔に、この大きな胸っていう武器があるのに」
そう言いながら、女性は自分の目の前にある胸を指先で軽く突っついた。
「人間の男は貴女みたいな女の子が好きなんでしょ。だったら、もっと活用しないと」
「……そうなの?」
「あら、フィーネなら知ってると思ったけど。あんなに、人間のことに興味を持っていたんだから」
「……人間……か」
「ま、貴女はセイレーンなんだから、いざとなったらその力で簡単に男を虜にできるから問題ないわよね」
「ええ、そうよね……」
あまり乗り気でない雰囲気のフィーネを不審に感じながらも、彼女はそこまで深く探ることもせず街のなかに消えていく。
彼女の背を見送りながら、フィーネは小さくため息をついた。
「人間の伴侶か……」
今のフィーネに、以前のような人間に対する好奇心はほとんど残っていなかった。
種の存続のために人間の男と交わり、子を残さなければならないことは理解している。
しかし、戦場で垣間見た人間の弱さや残酷さ、同種同士で殺しあう姿に幻滅していた。
種を残すために来ている彼女にとって、その姿はとても愚かしく映り、そんな人間との間に子を残すということに嫌悪さえ感じていた。
戦争で生じた心の変化は、フィーネから人間に対する関心を消し去っていた。
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