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白河真冬(15)は、誰しもが浮かれて気が緩んでいる春がどことなく嫌いだった。
凄く嫌いって訳じゃないが、ほわっとしたぬるま湯みたいな季節が、文字通り冬生まれの真冬には個人的にしょうに合わなかった。
もっとピリッと心まで引き締まる様な肌寒い季節を、彼女は愛していた。
ふぁあ~、大きな欠伸をひとつして、ほらこれだもの。こうぽかぽか暖かくちゃ眠くなっちゃって仕方ないじゃないの。
そう自分に言い訳をして、バスの中でウトウトと深い眠りに落ちていった。
ブーッ!降車ブザー音に続き、プシューという空気音とともに扉の閉まる音がバスの中に響く。
ハッ!唐突に真冬は目を覚ました。
はたと窓の外を眺める。
あっちゃーーしまった!
降りるべき停留所を寝過ごしてしまった。
コレだから春は大嫌いなのよ!!
少し見当違いな八つ当たりをして、慌てて降車ボタンを連打した。
彼女の中で、春が少しから大嫌いに大幅にランクダウンした。
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