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それはイゾルデも抱いていた疑問だった。
「魔女がいる限り、アルカナスは存在するのかしらね。まあ、もうすぐ力を失くす貴女にはもう考える必要はないことね。」
「私はその現実を受け止められないの。力を失うことがこんなに残酷だとは。」
「あ、ら。魔女と戦えなくなるのが嫌とはいうけど、後輩がいるじゃないの。」
「自分にしか成し遂げられないことがある。あるはずよ。」
グウィネアは目を細めた。
「力を失うのが嫌。そうよ。ただの人としてなんか生きられない。生きがいを奪われて。」
「生きがい?」
「私はアルカナスを出ればトリスタン公爵と結婚する。」
「いいじゃないの。」
「死んだも同然よ!」
イゾルデは激した。
「私は最後まで戦いたい!安穏とした人生は望んでいない!」
「なら?どう抗うと?」
静かにグウィネアは言った。
「聖導女としてあれないなら、別の存在になる。」
「何に?」
イゾルデは躊躇した。
「そう、そうね。力が要るわ。でも魔女とは契約しない。」
「どうやって力を得るのかしら?」
「あるはずよ。力を得る方法は。」
「ずいぶん無茶を言うのね。別の存在?聖導女でも見習いでもない存在に?」
「そうよ、聖導女は聖導院に属しているからそう呼ばれるのであって、そうでなくても戦えば変わらないわ。」
「聖導院が見逃すかしら?それが何を意味しているのか、分かっている?異端者としてアルカナスから追われる身になるのよ?やっていることが変わらなくても。」
「・・・、分かっている。」
イゾルデはうつむいた。
「ねえ、くどいようだけど、何故そこまでして戦うことに執着するのかしら?魔女に余程の恨みがあるの?」
グウィネアの言葉に心なしかねっとりとした響きがあった。
「魔女は全て狩る。それが私の望みよ。恨みとかそういうのではない。魔女がこの世に存在する限り、戦うことはやめない。神女様の為に。」
ハイプリステス・スリスタ。
あのお方の為なら、私は生涯を、この命を捧げる。
「そう、神女様の為に。」
噛み締めるようにイゾルデは言った。
「会ったことがあるの?」
イゾルデはグウィネアを睨んだ。
「ええ。あのように光輝に満ち満ちたお方を前にしたらあなたの仮説は疑わしくなるでしょうね。」
ククッとグウィネアは笑った。
「そう、そういうことなの。」
「だから私は力を剥奪されて失うわけにはいかない。手段は選ばない。」
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