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「何を、企んでいるの?でしょう?」
「そうね。」
「見て。」
グウィネアはイゾルデに手を差し出した。
手の甲の血管がみるみる浮き上がり、骨の様な筋が走り、黒銀の鱗が手の平から腕にかけて一斉に生えた。
イゾルデは息を呑んだ。
「もう兆候は現れている。時間の問題ね。時々意識も途切れるし、何とか堪えてはいるけど。」
「本当に、変形するのね?」
「魔女に人格はない。つまりグウィネアという人間は消えるということね。」
「そんなこと、あなた、受け入れられるの・・・?」
「聖導女にならなかったのは、見習いになったのは、魔女に救われたからよ。」
「何ですって?」
グウィネアの言葉にイゾルデは耳を疑った。
「私はね、娼家に売られて娼婦になるべく育てられた。ふふ、私はそんな運命は嫌だった。そこに私に良くしてくれた人がいたの。その人も娼婦よ。でも見習いであることは分からなかった。いえ違うわね。無意識下に力が眠ったまま、その力を顕現させることもなく、無自覚のままだった。ある日、その人は魔女に変形し、辺り一帯を破壊した。だけど私は生き残った。こんな話、信じられないでしょうけど、再びヒトの形に戻ったのよ。そして私に全ての力を渡して消えた。それ以来力が、魔法が使えるようになった。」
「そんな、そんなことって。」
「神女は私を運命から救いやしなかった。魔女が救ってくれたのよ。」
グウィネアはクツクツ笑った。
「魔女になることはその時から定められたことだけど、ためらいはないわ。もしかしたら意識は残るかもしれないし、それなら違う道もあるわね。」
「魔女は、災いと破壊をもたらす存在よ。呪いをもってこの世界を蹂躙している。この事実は変わらないし、それはあなたも認めるでしょう?」
イゾルデは絞り出すように、噛み締めるように、言った。
「そうね、事実としてはね。でも、イゾルデ、何故魔女がそのような存在になったのかまでは考えないのかしら?」
「それ、は・・・、」
「まあ、事実は事実だからね。魔女がこの世の摂理から逸脱しているのなら、神女も然り、と言える。摂理を超えたものは歪みをもたらす。魔女がそうなら、神女もそうだと仮定できなくて?」
「そんな、こと、は、ない。神女様はこの世に光をもたらす存在よ。」
「ならばその影は魔女ね。光のあるところに常に影はある。」
「愚弄しないで。あなたがどう言おうとも私には私の考えがある。」
「どんな?」
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