第3章 輪舞は終わらない

6/7

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
「何を、企んでいるの?でしょう?」 「そうね。」 「見て。」 グウィネアはイゾルデに手を差し出した。 手の甲の血管がみるみる浮き上がり、骨の様な筋が走り、黒銀の鱗が手の平から腕にかけて一斉に生えた。 イゾルデは息を呑んだ。 「もう兆候は現れている。時間の問題ね。時々意識も途切れるし、何とか堪えてはいるけど。」 「本当に、変形するのね?」 「魔女に人格はない。つまりグウィネアという人間は消えるということね。」 「そんなこと、あなた、受け入れられるの・・・?」 「聖導女にならなかったのは、見習いになったのは、魔女に救われたからよ。」 「何ですって?」 グウィネアの言葉にイゾルデは耳を疑った。 「私はね、娼家に売られて娼婦になるべく育てられた。ふふ、私はそんな運命は嫌だった。そこに私に良くしてくれた人がいたの。その人も娼婦よ。でも見習いであることは分からなかった。いえ違うわね。無意識下に力が眠ったまま、その力を顕現させることもなく、無自覚のままだった。ある日、その人は魔女に変形し、辺り一帯を破壊した。だけど私は生き残った。こんな話、信じられないでしょうけど、再びヒトの形に戻ったのよ。そして私に全ての力を渡して消えた。それ以来力が、魔法が使えるようになった。」 「そんな、そんなことって。」 「神女は私を運命から救いやしなかった。魔女が救ってくれたのよ。」 グウィネアはクツクツ笑った。 「魔女になることはその時から定められたことだけど、ためらいはないわ。もしかしたら意識は残るかもしれないし、それなら違う道もあるわね。」 「魔女は、災いと破壊をもたらす存在よ。呪いをもってこの世界を蹂躙している。この事実は変わらないし、それはあなたも認めるでしょう?」 イゾルデは絞り出すように、噛み締めるように、言った。 「そうね、事実としてはね。でも、イゾルデ、何故魔女がそのような存在になったのかまでは考えないのかしら?」 「それ、は・・・、」 「まあ、事実は事実だからね。魔女がこの世の摂理から逸脱しているのなら、神女も然り、と言える。摂理を超えたものは歪みをもたらす。魔女がそうなら、神女もそうだと仮定できなくて?」 「そんな、こと、は、ない。神女様はこの世に光をもたらす存在よ。」 「ならばその影は魔女ね。光のあるところに常に影はある。」 「愚弄しないで。あなたがどう言おうとも私には私の考えがある。」 「どんな?」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加