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第4章
晩餐は聖導院ではなく、聖宮の一室で行われる。
引率は神官のダイナ、ルビア、トドラの三人だ。
神官とは聖導女とは違い、神女に仕える人々の総称で、一生涯を神女に捧げる。
魔女と戦う力を有しない。
神事に仕えるのが主な役割だ。
列を成して神官の引率のもと、聖宮へ向かう。
聖宮は大神殿の中に林立する神殿の一つだ。
この前にちょっとした騒動があった。
中等部生のブリュンヒルデ・マンナズがオズマ・カンザスを勧誘したのだ。
ブリュンヒルデは中等部の聖導女の中では強い力を有し、単身で見習いのギルドを一つ潰したことで有名だった。
そんなブリュンヒルデは東の魔女を倒したオズマに目をかけようとした。
ところがオズマはその誘いを断わった。
断るどころかブリュンヒルデを馬鹿にし、戦いを申しこんだのだ。
「ブリュンヒルデさんには格の違いを教えてやらないとですねー!」
とんでもない宣戦布告だ。
見習いとの戦いの前から聖導女同士の戦いかと皆が驚愕するなか、神官トドラが二人を諌めて事なきを得た。
「全く。性格破綻者ね。」
この騒動についてだった。
「あれだけ自信があるのはいっそすごいね。」
冗談じゃない、といった様子でグウェンダリンは眉をしかめた。
「お遊びじゃないのよ。」
フラウとグウェンダリンは並んで歩いている。
双子のウンディネとナイアスは見えない。
ざっと20人ほどだろうか。
フラウが思ったよりは数は少なかった。
双子が話していたラダという少女が誰なのか、むろんわからない。
「信じられないなあ。」
背後から声が聞こえて振り返ると、短髪の少女がにこっと笑った。
「あたしみたいのがこんな場所に来ることになるなんて思わなくてさ。」
「うん。そうだよね。」
フラウはうなずいた。
隣の少女は凛々しい雰囲気に満ちていた。
「私もよ。マグダレーナ様のお側を離れるのは忍びがたいわ。」
「騎士なのにね。務めがあるのにね。」
凛々しい少女は騎士でもあるのか。
フラウは内心驚いた。
「あ、あたしタイス。あなたは?」
「フラウ。」
「マグダレーナ様、というとナガルア国のことかしら?」
「ええそうです。」
グウェンダリンの言葉に騎士の少女は驚いたようだった。
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