第4章

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「マグダレーナ姫は一騎当千の騎士姫と呼ばれているものね。」 「はい。」 「私はグウェンダリン。」 「グウェンダリン、あの、ラブラロス王国のグウェンダリン様で?」 グウェンダリンは肩を竦めた。 「そうよ。でもここではグウェンダリンでいい。あなたは?」 「ターニャです。」 「ナガルア国のマグダレーナ、ね。」 「グウェンダリンは知っていたの?」 「ええ。フラウは知らないのね。騎士でも導騎士と呼ばれるほど強い騎士よ。」 「導騎士?」 「聖導女とは同じようで、違うの。騎士団が聖導院みたいなものかしらね。」 グウェンダリンの説明を聞いてもフラウにはいまいち分からなかった。 一行は聖宮の一角の建物に入った。 中に入ると、回廊がそこかしこに巡らされ、どれも上へ目指していた。 花弁、海藻、樹木、といった意匠が絡まりあうように彫られ、階段はあらゆる半貴石で敷き詰められていた。 各所に踊り場があり、一部屋ほどの広い踊り場もあった。 三人の神官とフラウ一行の他には人影は見えなかった。 踊り場の一つで止まり、続き部屋へ入った。 部屋は建物から突き出た巨大なバルコニーの形をしており、螺旋模様で縁取られた窓が両面に並んでいた。 大理石の横長の卓が据えられ、やはり大理石の背の高い椅子が並んでいた。 卓上には果物の盛り合わせ、飾りつけられた山形の焼き菓子、肉を詰めたパイの山などが載せられていた。 銀製の器からは温かいスープの匂いがする。 上座の方に黒髪の若い女性が立っていた。 銀糸の刺繍のケープをまとっている。 強気そうな面立ちをしていた。「ようこそ。アルカナスへ。私は大神官補のアテナイ・マルコアです。」 少女達は粛々と席につく。 「今宵は楽しんで下さいね。こうして皆さんが一堂に会するのも、これからはなかなかないことですから。」 目の前のゴブレットにはいつの間にか飲みものが満たされていた。 「皆さんに祝福を。」 アテナイはゴブレットを掲げた。 少女達もその動作に倣い、それぞれ掲げた。
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