第4章

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一人一人自己紹介があるのかと思いきや、そんなこともなく、晩餐は純粋に食事会だった。 フラウの右にはナターシャ、左にはヤンという名前の少女が席について三人と話しをすることになった。 ナターシャはタマオリ国、ヤンはガラリア島の出身だと話した。 「タマオリでは玉、翡翠がよく採れてね、翡翠の細工師が沢山いるのよ。」 「へえー。うちは貝の細工かな。真珠貝が採れるから。」 「私の国ではそういうのはないですね。」 「ティタニアは大昔妖精の女王がいたとかなんとか聞くけど。」 「そんなこと言われてはいますけど、普通の国ですよ。妖精っていうのはよく分かりませんけど。」 「精霊を知らないの?」 「知らないですね。」 「まー、今じゃ死語に等しいんじゃないの?」 精霊の直系だというウンディネとナイアスの双子がいるが、彼女はを前にしてもフラウにはピンとこない。 自然に宿る霊魂が具現することが精霊、妖精らしいが。 「ヤンの国では真珠は星々が流した涙とか言われることがあるもん。はっはっ。」 「それはロマンチックね。」 「ティタニアったらオーロラが見られるんだよね。」 「そうですね。それは綺麗ですよ。」 「ヤンは南の国だから見てみたいもんだな。」 「私も見てみたいわね。」 ナターシャは言いながらゴブレットを持ち上げた。 グウェンダリンは美しいが、ナターシャは妖艶な美しさだった。 なにかしら神秘的な雰囲気がする。 ヤンはひたすらに陽気だった。 「ナターシャ、見習いもこういうことすんのかな?」 「まあ、するんじゃないかしら?見習いを束ねているのは古参の見習いではないかとは思うけど。」 「魔女ではないんだ。」 「魔女は単独の存在よ。」 「不思議だよねえ。あたし達見習いと戦うんでしょ?」 「いいえ、本来は魔女よ。」 ナターシャは断言した。 その言葉にフラウはドキリ、とした。 「えっ。違うの?」 「ええ、違うの。見習いという存在が想定外ね。」 「どういうこと?」 「見習いは聖導女の召命を拒んで魔女に仕えることを選んだ連中だから、私達と変わりないのよ。」
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