第2章 青春は始まる

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第2章 青春は始まる

聖導院は聖都と呼ばれるアルカナスにある。 アルカナスが聖都と呼ばれるのは神女とも呼ぶプリステスが都の統治者であり、一国の規模と権威を保持しているからだ。 聖導院の院長はプリステスを補佐する最高神官である。 プリステスは神女と呼ばれるように、この世ならざる力を持つ。 魔法とは違う。 魔法とは見習いと呼ばれるギルドが駆使する邪法だ。 プリステスがそなえる力がいかなるものか、実態は把握されていない。 にもかかわらず、畏怖の対象としてプリステスはアルカナスに君臨する。 フラウが聖導院について、持っている知識はこんなところだった。 聖導女が寄宿する聖導院は7つの寄宿舎と3つの校舎を擁している。 (ひっろいなー。) 案内された部屋でフラウはベッドに座ってのんびりしていた。 自分が聖導女として選ばれ、アルカナスに招かれた実感はまだ湧かない。 (こんな部屋で住むなんて、じぶんちはほんと狭かったんだなあ。そんなふうには思わなかったんだけどなあ。) (一つの部屋でこれだけの広さだとして、一体ここには何人の聖導女がいるわけ?) 聞けば今から来るであろう同室になる院生とはこれから六年間生活を共にするパートナーでもあるという。 フラウがいるのは初等部の寄宿舎だ。 (静かだなあ。人はたくさんいるはずなのに。) バンッ!! ドアが激しく開いた。 「グウェンダリン。」 「え?」 「グウェンダリンよ。名前。」 「えっ、あ?」 「名前。」 「え?」 栗色の波打つ髪を揺らしてグウェンダリンは苛立たしげに首を傾けた。 「あ・な・た・の!お・な・ま・え、は?!」 「へ、え、う、あ、フラウです!」 「ヘエウア・フラウ?」 「いやっ!フラウです!フラウ!」 グウェンダリンは溜息をついた。 「あちこちで氷の人柱。あちこちじゃないわ。無軌道ではない。どこを目指しているのか。北のほうね。いまや人々は恐怖よ。北を目指しつつ運悪く出会った人は氷に変えられている。樹海の深淵。緋色なる夢見姫。宝玉の操り手。まだまだ魔女が各地に散らばっているのに一体全体平和なんて訪れるのかしら?ほんとまったくわたしもあなたも運がいいわけね。ええ、能力、ここに来れば技とでもいうのか、とにかくそういうものを天与として与えられて。あなたは魔女を回避したことある?わたしは棘の薔薇を退けたわ。成長過程の魔女ではあったけど。」
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