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その言葉はフラウの胸に重く響いた。
ただ人の倍駆け抜けることができるだけでこれから見習い、悪くしたら魔女と闘うなんてフラウは恐ろしかった。
魔女にはグウェンダリンの言う通りでくわしたことはないが、見習いと心ならずとも対峙したことはある。
それも昨日まで友達だと思っていた、人間だ。
彼女は既に見習いだったが、素性を隠していたのだ。
それが或る日突然フラウに牙を向けた。
フラウは逃げて逃げて逃げに逃げておよそ人が走りきれない距離を逃げた。
ウェンズデイは諦めたのか見逃してくれたのか。
命からがら逃げ切ったフラウはそのとき恐怖より悲しみで泣いて泣いてひたすら泣いた。
幼いころから隔てなくいつでもどこでもなんでも一緒だったウェンズデイに何が起きたのか。
「親友が実は見習いだったわけ。」
グウェンダリンの言葉にフラウは驚いた。
「え!?」
「鷹の目と呼ばれてたわね。フクロウの目とも呼ばれてた。いま起こっていることを見ることができるの。フラウが見ていたものを見させてもらったのよ。」
「な、な。」
うっかり何かを考えられないではないか!
「覗き見とでも呼びなさいよ。私の能力が悪趣味なのは否定しないわ。」
「いや、その。じゃ、じゃあさっきの氷の人柱うんぬんかんぬんって。」
「ここに来るまで見えたことね。でもね。その人を氷に変えた魔性はなんだか雰囲気が違うのよね。魔女の匂いがしないというか。」
「そんなのってありえないんじゃないですか?」
「ため口!言われたことは忘れない!」
「そんなのってありえないよね!」
飛び上がりながらフラウは叫んだ。
ふうっ
グウェンダリンはフラウが座っていたベッドと対のベッドに腰をかけた。
やっと目線が同じ位置になってフラウは安心した。
「固いわね。どうもここに来たことが不本意らしいわね。」
「不本意とかではなくて、身の程にあわないというのか・・・。」
「そのウェンズデイを探し出そうとは思わないわけ?」
「とても立ち向かうどころか逃げるので精一杯だった。立ち向かって話し合おうだなんてそんな雰囲気でも場合でもなかった。だからいまでもそうだと思う。」
「もたもたしてたら魔女に変形してあなたの知っているウェンズデイはいなくなるわよ。」
それは一番考えたくないことだった。
ウェンズデイは行方知れずだ。
どこにいるのかすらあてがつかない。
フラウを襲った後、村から姿を消した。
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