第2章 青春は始まる

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「四方を総べる魔女。」 「それぐらいは知っているでしょ?」 「それぞれの魔女が恐ろしいのは」 「人格を有しているから」 「北の魔女はガラスの靴」 「南の魔女はルビーの靴」 「西の魔女は金の靴」 「それぞれ履いている」 「人格を有しているですって?」 双子は同時に頷いた。 「でも彼等が動くことはめったにない。」 「なぜだかね。」 「だからオズマの話は信じられないんだよ。」 「残る三方の魔女が動くかもしれないし。」 「魔女を倒したのはたいしたことだし」 「すごいことなんだけど」 「迷惑きわまりないよね。」 「ウンディネ。」 「うん?」 右側が応えた。 「それほどのいきさつをどうやって知ったの?」 「私はナイアスだよ。」 双子のちゃかしだった。 「水の行き交うところ知らないことはないんだ。」 「それがナイアスの力だよ。」 ウンディネが言った。 「ウンディネは水の行き交うところでは無敵だよ。」 ナイアスが言った。 「無敵ですって?」 「無敵。」 「無敵というなら魔女をも倒せるというわけ?」 「厳しいなあ。」 「四方の魔女についてはよくは知らなかったけど、貴方達は魔女と相対したことがあるわけ?」 グウェンダリンの語調にこころなしか怒りが感じられた。 「うん。」 あっさりと双子は頷いた。 「母上は星の海と呼ばれていた。」 「魔女なんだ。」 「母上に鍛えられた。だからそうそうなことでは倒されないよ。」 「これ極秘情報。」 これにはグウェンダリンもフラウも驚いた。 「あ、貴方達。よ、よくここに来れたわね?聖導院は知っているの!?」 「聖導院を前に何も隠し立てできないよ。」 「当たり前。」 「他の子には言わないでねー。」 「特にラダには。」 「あの子、魔女という魔女に憎しみを抱いている。」 「ドラスの生き残りだから。」 「本当に言わないでね。」 「ラダにばれたら」 「殺されちゃう。」 「ラダは緋色なる夢見姫の殲滅から生き残った。」 「彼女は強いよ。」 「これは私達からのお願い。」 「心に留めておくわ。」 「ありがと。」 「ありがと。」 「いいけど、なぜ私たちにそんなこと話したの?」 「それはだって」 「グウェンダリン、貴方が鷹の目」 「フクロウの目の持ち主だから。」 「オズマは嫌いだけど」 「ラダは怖い。」 「炎の操り手だから。」 「水は火に弱いんだよ。」 突然床が水浸しになった。
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